Classici giapponesi con furigana
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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
Leggi 三郎爺 (さぶろうじい) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.866 caratteri · 50 schermate
そればかりでなく、現に足元をさぐりさぐり行った三郎は、思わずハッと息をのんだほど、気味のわるいものを見た。
もう半歩ばかり先へ、若し進みでもしようものなら、もう二度と「今日様」は拝めなかったろう。底の石が断崖になって、それから先はまるで底無しのようである。
尺度を支えに張って、そーっと覗いた三郎は、つい身ぶるいをしてしまった。まるで黒水晶の切り口を、縦に見たように、真黒く、けれども妙にすき通るような色を持った水の、厚い厚い層が見えるばかりで、底らしいものはどこにも見えない。
三郎の心には、伝説的な恐怖が、微に蠢(うごめ)き始めた。で、大急ぎで、岸の方に顔を振り向けて、駄目だという示しに大きく手を振った。そして、一二歩後戻りをしてから、大きな声で、
「ここから先あ、底無しだぞッ」
と怒鳴った。
すると、山沢さんが、しきりに首を傾けていたが、やがて「もう駄目かな」と、普通な声で独言した。それが、はっきり彼の耳へ届いた。
山沢さんはただ、何でもない口調で、もう駄目かなと云っただけである。
けれども、三郎は心にもっと強い失望と、信頼の減少とを感じたような気がした。