Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
しゃんはい
上海
横光 利一
Leggi 上海 (しゃんはい) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.628 caratteri · 292 schermate
」
「ええ。」
しかし、参木は、そのとき激しく秋蘭のことで我を忘れ続けていた自分を思い出した。もしあの日秋蘭とさえ逢って来ていなければ、そのままお杉の後をどこまでもと自分は追い続けていたにちがいなかった。だが、何もかももう駄目だ。自分は今でもあの秋蘭めを愛している。自分はあ奴の主義にかぶれているんじゃない。俺はあ奴の眼が好きなんだ。あの眼は、いまに主義なんてものは捨てる眼だ。あの眼光は男を馬鹿にし続けて来た眼光だ。お杉の傍にいるこの喜びの最中に、まだ秋蘭のことを、いつとはなしにいきまき込んで頭の中へ忍び込ませている自分に気がつくと、彼は闇の中で、のびのびと果しもなく移動していく自由な思いの限界の、どこに制限を加えるべきかに迷い出した。確に、自分は今は秋蘭のことよりお杉のことを考えねばならないときだ。お杉は自分のためにお柳から食を奪われ、甲谷の毒牙にかかり、そうしてこのじめじめした露路の中へ落ち込んだのではないか。しかし、さてお杉のことを今考えて、彼女を自分はどうしようというのであろう。――彼はお杉を妻にしている自分を考えた。それは己惚でなくとも必ずお杉を喜ばすことだけはたしかなことだ。