Classici giapponesi con furigana
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
Leggi 世相・競馬 (しがつばか) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.112 caratteri · 39 schermate
という淡々とした書出しの方がむずかしいのだ。
私は武田さんの小説家としての円熟を感じた。武田さんもこのような書出しを使うようになったかと、思った。しかし、私は武田さんを模倣したい気はなかった。だから、今、武田さんの真似をした書出しを使うのは、私の本意ではない。しかも敢て真似をするのは、武田さんをしのぶためである。武田さんが死んだからである。してみれば、武田さんが死ななければこんな書出しを使わなかった筈だ。ますます私の本意ではない。
一
武田さんのことを書く。
――戎橋を一人の汚ない男がせかせかと渡って行った。
その男は誇張していえば「大阪で一番汚ない男」といえるかも知れない。髪の毛はむろん油気がなく、櫛を入れた形跡もない。乱れ放題、汚れ放題、伸び放題に任せているらしく、耳がかくれるくらいぼうぼうとしている。よれよれの着物の襟を胸まではだけているので、蘚苔のようにべったりと溜った垢がまる見えである。不精者らしいことは、その大きく突き出た顎のじじむさいひげが物語っている。小柄だが、角力取りのようにでっぷり肥っているので、その汚なさが一層目立つ。