Classici giapponesi con furigana
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ぼしぞう
久生十蘭短篇選
久生 十蘭
Leggi 久生十蘭短篇選 (ぼしぞう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 48.344 caratteri · 96 schermate
「こんどこそうまくいきそうだ」
綱はカセの棒にうまく絡んだ。兄弟が力をあわせて一トひねり二タひねりするうちに、事はわけなくすんでしまった。
朝霞の亡骸は用意してきた柩におさめ、青侍どもに担がせてその夜のうちに深草まで持って行き、それから七日おいて、泰文のところへ、朝霞が時疫で急に死んだと、実家からあらためて挨拶があった。
「時疫とは、いったいどのような」
「脚気が腹中へ入って、みまかられました」
泰文は薄す眼になって聞いていたが、
「かわいそうな。さぞ痛い脚気だったろう」
と人の悪いことをいった。
朝霞が死んだのは承安三年の十月のことだったが、それから二年ほどなにごともなくすぎた。泰文は相変らず公子のところへ通い、子供らは母のいない葵ノ壺でしょんぼりと暮らしていた。すさまじい扼殺が行われた夜、葛木と光麻呂は遠い別棟に居り、花世はまだ十一で、眠っていたところを清成に抱きだされたのだったから、三人の子供らは母がそんなひどい死にかたをしたことは露ほども知らなかった。召使どもの言うとおり、深草の実家で病気で死んだのだと信じこんでいたので、心の奥底にある死んだ母の影像は、さほど無残なようすはしていず、母に死なれた悲しみも、月日の経つにつれてすこしずつ薄れ、あきらめて母のことはあまり言いださぬようになった。