Classici giapponesi con furigana
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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
Leggi 二つの庭 (ふたつのにわ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.492 caratteri · 389 schermate
なぜだったのだろう。結婚という考えがあんまり突飛で、あり得ることと思えなかったから、現実の生活でそういう破局に面している夫婦としての父の立場が訴えて来なかったのだろうか。十年ばかり昔、父と母とが珍しく一緒に関西から九州へ旅行したことがあった。泰造の出張をかねてであったが、髪ひとつ結うにも手間のかかる多計代が同行したことは珍しかった。二十日ばかりの旅行を終って、父と母とは九州のおいしいポンカンや日向みかんの籠をもって帰京した。そこの小さい島にだけ南洋の植物がしげっている日向の青島の話を、父も母も興味をもって話したりしたが、日がたって、伸子ばかりのとき、多計代が、
「旅行もいいけれども、私は名古屋から、よっぽど一人で帰って来てしまおうかと思った」
といった。
「どうして?」
「あんまり腹がたったからさ」
「――だから、どうしてなのよ」
「お父様ったらひとが見ていないと思って宿屋の女中と、ふざけたりなさるんだもの……」
十八になったかならない年ごろだった伸子は、きまりのわるい顔をした。
「ふざけるって……」
名古屋で、ある人の招待をうけたとき、母の仕度がおくれて父が一人さきに宿の玄関を出た。