Classici giapponesi con furigana
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ふたつのみち
二つの途
豊島 与志雄
Leggi 二つの途 (ふたつのみち) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 51.102 caratteri · 104 schermate
という返事を聞いて立ち上ろうとすると、「も少し話してゆかない?」と啓介は云った。「私ちっとも眠かありませんわ。」と信子が微笑みながら云った。木下はまた腰を落付けて、フランスの印象派の画家達の話をした。「彼等の苦闘の生涯を想うと、力強くもなればまた淋しくもなる、」と彼は云った。「推移があるから人生は淋しいのだ、」と啓介は云った。
或る晩、木下は可なり遅くまで病室に残っていた。啓介は眠ってるらしかった。暫く待っても眼覚めそうもないので、彼はそっと立ち上った。そして忍び足で自分の室に帰った。
信子は炬燵にはいったままぼんやりしていた。木下が居なくなると、急に室の中が寒くなったように感じた。それで、火鉢に炭をついで、また一寸炬燵にあたった。何処か隙間があるのではないかと、室の中を見廻してみた。啓介が眼を見開いていた。
「木下君は?」と彼は尋ねた。
「もう御寝みなすったでしょう。つい先刻までいらしたけれど。」
「そう。お前ももう寝たらいいだろう。」
「ええ。今晩は何だか寒かなくって?」
「さあ、病気で寝てると寒いか暖いかちっとも分らないが……。」彼は中途で言葉を切って、暫く電灯の光りを眺めていた、そして云った。