Classici giapponesi con furigana
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にじゅうしんぞう
二重心臓
夢野 久作
Leggi 二重心臓 (にじゅうしんぞう) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 65.188 caratteri · 129 schermate
「……バ馬鹿ッ……芝居じゃないゾッ……芝居じゃないんだぞッ……ト止めろッ……」
突然に叫び出した浴衣がけの若い男が一人、最前列の左側の見物席から、高い舞台の板張に飛付いて匍い上ろう匍い上ろうと藻掻き初めた。それを冷然と流し目に見た天川呉羽は、慌てず騒がず、内懐に手を入れて、キラリと光るニッケルメッキ五連発の旧式ピストルを取出した。自分の白い富士額の中央に押当ててシッカリと眼を閉じた……と思う中に、
……轟然一発……。
美しい半面をサット真紅に染めた呉羽は、ニッコリと笑って両手を合わせた。背後の白幕に虹のような血飛沫を残しながら、フットライトの前にヒレ伏した。
トタンにヤット見物席から匍い上った浴衣がけの男が、飛び上るように呉羽の身体に取付いた。綺麗に分けた髪を振乱したまま正面に向って悲壮な声で叫んだ。
「ダ誰か来てくれッ。芝居じゃないゾッ」
それは大森署の文月巡査であった。その中に幕の横や下から笠支配人を先に立てた四五人が馳寄って来て、呉羽の身体を無造作に、向って左の方へ抱え上げて行った。
冷やかなベルの音に連れて、天井裏から真紅の本幕が静々と降り初めた。