Classici giapponesi con furigana
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ひとでなしのこい
人でなしの恋
江戸川 乱歩
Leggi 人でなしの恋 (ひとでなしのこい) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.245 caratteri · 33 schermate
真ッ赤に充血して何かを求めている様な、厚味のある唇、唇の両脇で二段になった豊頬、物いいたげにパッチリ開いた二重瞼、その上に大様に頬笑んでいる濃い眉、そして何よりも不思議なのは、羽二重で紅綿を包んだ様に、ほんのりと色づいている、微妙な耳の魅力でございました。その花やかな、情慾的な顔が、時代のために幾分色があせて、唇の外は妙に青ざめ、手垢がついたものか、滑かな肌がヌメヌメと汗ばんで、それゆえに、一層悩ましく、艶かしく見えるのでございます。
薄暗く、樟脳臭い、土蔵の中で、その人形を見ました時には、ふっくらと恰好よくふくらんだ乳のあたりが、呼吸をして、今にも唇がほころびそうで、その余りの生々しさに私はハッと身震を感じたほどでありました。
まあ何ということでございましょう、私の夫は、命のない、冷たい人形を恋していたのでございます。この人形の不思議な魅力を見ましては、もう、その外に謎の解き様はありません。人嫌いな夫の性質、蔵の中の睦言、長持の蓋のしまる音、姿を見せぬ相手の女、色々の点を考え合せて、その女と申すのは、実はこの人形であったと解釈する外はないのでございます。