Classici giapponesi con furigana
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しぐれがさ
人情武士道
山本 周五郎
Leggi 人情武士道 (しぐれがさ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.700 caratteri · 51 schermate
「お雪さん」
と息詰るような声で云った。
「おまえさん飛んだことをしてくれた。あれはまだ試し彫で、形もなにもついちゃあいない、子供の玩具にもならないやくざな物だ」
「でも杉辰さんはすばらしい出来だと」
「杉辰は道具屋だ、骨董物の売買には、鑑が利くかも知れないが、物の本当の値打を見る眼は持っちゃあいない、あんな駄物を宗七の作と云って人手に渡すくらいなら、私は今日までこんな苦労はして来やあしないんだ」
「あたし、宗さん、あたしそんなことには気が付きませんでした」
「お雪さんには分るまいが」
宗七は拳を握りながら云った。
「男の仕事はいのち懸けだ。寸分も隙があるものじゃあないんだ。今こそ云うが、……あのとき石町さんの註文を断ったのは、高い金が欲しいでもなく高慢でもなかった。私はこれまで五、六年のあいだに八十七態の鯉を彫った、清き鯉、沈み鯉、離れ、群れ、すっかり彫り尽してもう彫るべき物が無くなっていた。この上彫れば同じ物が出来る……だから私は断ったんです。訳を話さなかったのは、こんなことを云うと気障に聞えるからで、今度の蛙が立派に会得できたその時こそ、親方にもお話し申し、お詫びをするつもりでいたんです。