Classici giapponesi con furigana
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しぐれがさ
人情武士道
山本 周五郎
Leggi 人情武士道 (しぐれがさ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.700 caratteri · 51 schermate
「未練な話だが、此頃では幸枝どののことで頭がいっぱいなのだ、どうにも耐らない、仕事も手につかぬ始末だ、こんなことを云うのも貴公を朋友と頼むからで、なんとも恥かしい次第だが、貴公に縁談の申込みをして貰いたいと思ってな」
至はぐっと、唇を噛んだ。――聞いてならぬ事を聞いた。そういう後悔が胸を緊めつけた。
「どうだろう」次郎太は眼の隅で至の表情を窺がい、そして声には殆ど哀調を含めながら云った「貴公なら必ずひと肌脱いで呉れると思って頼むのだが、引受けては貰えないだろうか」
「……承知した」至は外向いたままで答えた、「……纏まるか纏まらぬかはわからない、然し話だけは取次ごう」
「そうか、やって呉れるか、かたじけない」
次郎太はそう云いながら、唇の端で微笑した。
家へ帰った至は母親が怪しむほどようすが変っていた。亡くなった父は厳格一方であったが、母親の夏女は甘すぎると思われるほど至を溺愛している、そして至もまた、母というより姉に対するような気持で、どんな事をも打明けて共に喜憂を分って来た。然し其日のことだけは別であった。幸枝のようすのなかに訴えかける感情の閃めきがあったのと同様、実は彼もまた以前から並ならぬ愛情を感じていたのだ。