Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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びぜんてんいちぼう

備前天一坊

江見 水蔭

Leggi 備前天一坊 (びぜんてんいちぼう) di 江見 水蔭 (えみすいいん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.511 caratteri · 25 schermate

Aozora Bunko

と聴き馴れぬ女の声が、室の一隅で起った時に、悲鳴に驚いて店の方からお幸が手燭を点けて急いで来た。

その光で見ると、白麻の衣に黒絽の腰法衣。年の頃四十一二の比丘尼一人。肉ゆたかに艶々しい顔の色。それが眼の光を険しくしているのであった。

「おう、お前様は晩方お泊りの尼さんでは御座んせぬか。あなたのお部屋は表二階。それがいかに暗闇とは云いながら、間違えるのに事を欠いて、離れ座敷のここへは?」とお幸は不審を打たずにはいられなかった。

「いや、庭内に稲荷の御祠があると女中殿から聴いて、ちょっとお参りの為に」

尼さんでも稲荷信心。これは為ぬ事とも云われぬので、お幸はそれもそうかと思わぬでもなかったが、しかし、又何となく合点の行かぬ節ありと見ぬでもなかった。

第一その金三郎の顔色が一通りではないのであった。まるで死人のそれの如く真蒼に変じているのからして、何か事情のあるらしく考えられた。

尼は初めて気が着いたらしく。

「これはこれは。どなた様かと存じましたら、あなたは小笠原金三郎様では御座りませぬか。変った土地でお目に掛りまする」

「おう、智栄尼で御座ったか」

「不思議な御対面で御座りまするな」