Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きずあとのはいけい

傷痕の背景

豊島 与志雄

Leggi 傷痕の背景 (きずあとのはいけい) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.022 caratteri · 38 schermate

Aozora Bunko

肩の少しこけた、肉附はよいが小柄に見える、なみの老人にすぎないが……。

田代芳輔の姿が奥に引込むと、元気な一団の中から、声が起った。

「さあ、これからが吾々の世界だ。」

大きな西瓜が一つ、宙に投り上げられた。

「早いぞ、西瓜は。」

「まあ見てろよ。」

先の尖った大きな三角ナイフを取って、ずぶりと二つに割って、中身をえぐって、ウイスキーを注いだ。

「こいつ、うまいことをしてやがる。」

四方から、大匙でしゃくい取られて、西瓜の一つは見るまに皮になった。

杉本も、いつか、そういう仲間に引入れられていた。が、多くは黙って飲食するだけで……。手入の届いた頭髪、口髭、ネクタイピン、勲章、胸のポケットから覗いてるハンカチ、折目の正しいズボン、とも糸の縫紋の羽織、軍服、絽の袴……そういうものの中にあって、彼の皺の多い古い合服が、変に目立っていた――それが、彼自身の意識にもうつって……。

「西瓜で思い出したが、」と杉本の側で声がした、「震災の時、河岸縁を、西瓜を一つ抱えて、一生懸命に走って行く小僧がある……。走っても走っても、どこも火事だ。息が切れて、立止ったとたんに、思いついた。