Classici giapponesi con furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Leggi 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 160.664 caratteri · 323 schermate
一九
「……おお苦しいか苦しいか。さぞ痛かろう痛かろう。肩からドクドク血が出ているなア。その苦しみもほんの一時、後は往生観念仏、楽になろうというものだ」
「む、むううう」
と権九郎は口を利くことさえ出来なくなった。それでもいわゆる最後の一念、全身の力を足にこめ俄然スックと立ち上がった。間髪を入れず斬り下ろした匕首。油断していた多四郎の腕へ切っ先鋭くはいったが冬の事で着物が厚く裏掻くことはなかったものの、多四郎の周章てたことは云うまでもない。「あっ」と叫んで後ろ様にパタパタと五、六歩逃げたほどである。
手の匕首をまず落とし、それから枯木が倒れるように権九郎は雪の上へ仰向けに仆れた。そしてそのまま長くなりもう動こうとはしなかった。彼は全く息絶えたのである。雪はさんさんと降っている。憐れな権九郎の死骸の上へも雪は用捨なく積もるのである。黒く見えていたその死骸は見ているうちに白くなった。やがてすっかり見えなくなった。雪の墓場へ埋められたのだ。
多四郎はヒラリと橇へ乗った。
一言も云わず見返りもせず彼は橇を走らせた。間もなく彼と橇の影とは吹雪に紛れて見えなくなった。