Classici giapponesi con furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Leggi 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 81.668 caratteri · 164 schermate
豚はそのまま屠場へ引摺られて行った。
「牛は宜う御座んすが、豚は喧しくって不可ません。危いことなぞは有りませんが、騒ぐもんですから――」
こういう肉屋の亭主に随いて、復た私は屠場へ入って見た。豚は五人掛りで押えられながらも、鼻を動かしたり、哀しげに呻って鳴いたりした。牛の場合とは違って、大鉞などが用いられるでも無かった。屠手はいきなり出刃を揮って生きている豚の咽喉を突いた。これに私はすくなからず面喰って、眺めていると豚は一層声を揚げて鳴いた。牛の冷静とは大違いだ。豚の咽喉からは赤い血が流れて出た。その毛皮が白いだけ、余計に血の色が私の眼に映った。三人ばかりの屠手がその上に乗ってドシドシ踏み付けるかと見るうちに、忽ち豚の気息は絶えた。
年をとった屠手の頭は彼方此方と屠場の中を廻って指図しながら歩いていた。その手も、握っている出刃も、牛と豚の血に真紅く染まって見えた。最初に屠られた南部牛は、三人掛りで毛皮も殆んど剥ぎ取られた。すこし離れてこの光景を眺めると、生々とした毛皮からは白い気の立つのが見える。一方には竹箒で板の間の血を掃く男がある。蹲踞んで出刃を磨くものもある。