Classici giapponesi con furigana
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なんぼく
南北
横光 利一
Leggi 南北 (なんぼく) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.591 caratteri · 40 schermate
「また来たんか?」
「また厄介になったんや、すまんが頼むぞな。ええチャボやな。こいつなら大分大っきな卵を産みよるやろ?」
「勘はな?」
「さア、今そこにうろうろしていらったが。」
安次は三尺の中から丸めた紙幣をとり出した。
「お霜さん。これ持っててくれんかな。二円五十銭あるのやが、何ぞの足しに、ならんかな。」
「そんなにたんと預かっておいて、お前使うて了うたらどうするぞ。」と、お霜は笑って云った。
「何アに使うて貰うたら結構や。持っててお呉れ、使い残りで悪いけど、それだけばち有りゃせんのや。」
「まアお前持ってやいな。お霜さんが安次の金とったなんて云われると、こちゃ困るわ。」
お霜は家の中へ這入って大根を切った。安次はまた三尺の中へ紙幣を巻くと、
「トトトトトト。」
と呼びながら鶏の方へ手を延ばした。どこかで土を掘り返す鋤の音がした。菜園の上からは白い一条の煙が立ち昇っていて、ゆるく西の方へ靡いていた。
勘次は叺を抱えて蔵の中から出て来ると、誰にも相手にされず、台石の上でひとりぼんやりしている安次の姿が眼についた。それは弱々しいとり残された者の感じで不意に彼の心に迫って来た。