Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なんちしんじゅう

南地心中

泉 鏡花

Leggi 南地心中 (なんちしんじゅう) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 39.205 caratteri · 79 schermate

Aozora Bunko

手の震えで滴々と露散るごとき酒の雫、蛇の色ならずや、酌参るお珊の手を掛けて燈の影ながら、青白き艶が映ったのである。

はたはたとお珊が手を拍くと、かねて心得さしてあったろう。廊下の障子の開く音して、すらすらと足袋摺に、一間を過ぎて、また静にこの襖を開けて、

「お召し、」

とそこへ手を支いた、裾模様の振袖は、島田の丈長、舞妓にあらず、家から斉眉いて来ている奴であった。

「可いかい。」

「はい。」と言いさま、はらはらと小走りに、もとの廊下へ一度出て、その中庭を角にした、向うの襖をすらりと開けると、閨紅に、翠の夜具。枕頭にまた一人、同じ姿の奴が居る。

お珊が黙って、此方から差覗いて立ったのは、竜田姫の彳んで、霜葉の錦の谿深く、夕映えたるを望める光景。居たのが立って、入ったのと、奴二人の、同じ八尺対扮装。紫の袖、白襟が、紫の袖、白襟が。

袖口燃ゆる緋縮緬、ひらりと折目に手を掛けて、きりきりと左右へ廻して、枕を蔽う六枚屏風、表に描いたも、錦葉なるべし、裏に白銀の水が走る。

「あちらへ。」

お珊が二人を導いた時、とかくして座を立った、美津が狩衣の袴の裾は、膝を露顕な素足なるに、恐ろしい深山路の霜を踏んで、あやしき神の犠牲に行く……なぜか畳は辿々しく、ものあわれに見えたのである。