Classici giapponesi con furigana
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なんきょくき
南極記
久生 十蘭
Leggi 南極記 (なんきょくき) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.753 caratteri · 35 schermate
それもしばらくのことで、間もなく、全感覚が脱落し阿片でも飲んだように、なんの苦痛も感じなくなる。
ここでは、雪さえも並々ならぬ形相をしている。色は真白で、氷のなめらかさも、透明さもない。六稜にならずに、針ともいえないような微小な針状の結晶をする。ちょうどタンポポの冠毛のようで、息で吹いただけで飛んでしまう。手で掬おうとすると、手の起す風でふわりとよそへ行ってしまう。軽すぎるので、降ることもできず、巻雲のようになって大気のなかに浮んでいることが多い。零下六十度ぐらいになると、いよいよ微小な分解をとげ、雪の上を歩いても足跡が残らない。
南極とは、こういった魔物だが、ここで屡々起る天候の突然異変は特に悪魔的であって、今日の気象学の知識では理解されないことが多い。低緯度地方の予測や予報の技術は、全然、この地方にあてはまらない。ある年の経験や記録で、他の年の天候を予想することは絶対に不可能である。一例をあげると、一九一二年の二月七日、ロス海に向いた氷堤上の温度は華氏の零下九度だったが、翌八日には零下七〇度に下った。こういうことがなんの前触れもなくはじまる。