Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ふるいど

古井戸

豊島 与志雄

Leggi 古井戸 (ふるいど) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.433 caratteri · 43 schermate

Aozora Bunko

」

「だって、お父さんが何か云ったでしょう。」

「ええ、ひどいことを云ったのよ。だからあたし、机を放り出して駆け出してやったの。」

「どんなことを云われたんです。」

「あたし達があんまり仲がよすぎるって、そして……夫婦気取りでいるって……。」

「え、そんなことを云われたんですか。」

「ええ。あたし、腹が立ってむちゃくちゃになったけれど……もう平気だわ。お父さんなんか何と云おうと、構やしないわ。」

何の恥らいの色もなく、じいっと見入ってきたその素純な眼付の前に、彼は次第に顔を伏せてしまった。と、頭の中がぱっと明るくなった。

「そうだ……越すのは止しましょう。」

彼女はにっこりして、首肯いてみせた。

「私は馬鹿なことを考えていたんです。」

「何のこと。」

見入ってくる彼女を引寄せて、その額にそっと唇を押しあてた。彼女はじっとしていた。

「どんなことがあっても平気でいましょう。」

「ええ、あたし平気だわ。」

彼は晴れ晴れとした朝日の光を見やりながら、両手の拳を握りしめた。

けれど、光子が階下に降りてゆくと、彼はまた不安な焦燥に駆られ初めた。光子が一緒にいる間は、平然とした晴れやかな気持だったが、一人きりになると、凡てが陰欝に曇ってきた。