Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ななしゆびものがたり

名なし指物語

新美 南吉

Leggi 名なし指物語 (ななしゆびものがたり) di Niimi Nankichi (新美 南吉) in giapponese con furigana. JLPT N4. Tocca una parola per il significato.

N4 · base · kanji e kana moderni · 10.312 caratteri · 21 schermate

Aozora Bunko

するとマタンの頭の中で、一つの声が、

「この世じゃ、みんながわるいことをするのだ。おまえも、ひとに金をぬすまれたのだから、こんどは、ひとの金をぬすんでやるがいいのだ。」

と、ささやきました。

「そうだっ。」

と、マタンは思いました。そこでマタンの左手が、さいふの上におずおずとのっかりました。

コオロギは、だまってしまいました。ローソクのほのおは、油のようにすんでしまいました。さっきまで、カルタでにぎわっていた台所のほうも、もう、ねしずまっていました。チョロチョロと、小川の水の流れる音だけが、この深いしずけさの中から聞こえてくる、ただ一つのものでありました。

マタンの左手が、ちょうど、引き出しの中のさいふの上におおいかぶさったとき、かれは、コツコツとたたく音を聞きました。それは、すぐやんでしまいました。マタンは、空耳だったのだと思って、さいふを手にとろうとしました。すると、またしても、コツコツとたたく音がしました。だれがどこを、たたいているのでしょう。ドアをノックしているようでもありませんし、まどを外からたたいているようにも、思えませんでした。だれかまだ、こんな夜ふけに、起きていたのでしょうか。