Classici giapponesi con furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Leggi 名人地獄 (めいじんじごく) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.286 caratteri · 301 schermate
「おお甚内か、あれを聞きな。何んと素晴らしい音色じゃねえか」
「ああ鼓か。いい音だなあ」兄と並んで腰を掛け、甚内もしばらく耳を傾げた。ポンポン、ポンポン、ポンポンと、なおも鼓は鳴っていた。と、鼓は静かに止んだ。恐らく一曲打ちおえたのであろう。甚三は一つ溜息をした。二人はしばらく黙っていた。
「あにき、この頃変ったな」不意に甚内が咎めるようにいった。「お前、どうかしやしないかな」
「何を?」と甚三は不思議そうに、「別に変った覚えもねえ」「いいや変った、大変りだ。この頃頻りに考え込むようになった。そうして元気がなくなった。そうかと思うと歌を唄うと、まえにも優してうめえものだ」
兄貴、どうだな、思い切っては
「俺らの追分のうめえのは、今に始まった事じゃねえ」甚三は多少の自負をもって、やや得意らしくこういったが、その声にもいい方にも、思いなしか憂いがあった。「宿一杯知れていることだ」
「ああそうともそれはそうだ。宿一杯は愚かのこと、参覲交代のお大名から、乞食非人の類まで、かりにも街道を通る者で、お前の追分を褒めねえものは、それこそ一人だってありゃしねえ。その追分を聞きてえばっかりに、歩いても行ける脇街道を、わざわざお前の馬に乗る、旅人衆だってあるくれえだ。