Classici giapponesi con furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Leggi 名人地獄 (めいじんじごく) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.286 caratteri · 301 schermate
かつてこれまで経験したことのない、殺気といおうか圧力といおうか、ゾッとするような凄い力が、相手の体全体から、脈々として逼って来た。……「不思議だな」と彼は思った。「何んだろういったいこの力は? いったい何から来るのだろう?」……どうもはっきりわからない。わからないだけに気味が悪い。で、なお造酒は考えた。
「あいつはまるであけっぱなしだ。全身まるで隙だらけだ。それでいてやっぱり打ち込めない。不可解な力が邪魔をするからだ。それに反してこのおれは、あらゆる神経を働かせ、あらゆる万全の策を取り、全力的に構えている。おれの方が歩が悪い。おれの方が早く疲労る。おれの方が根負けする」
こう思って来て平手造酒は、動揺せざるを得なかった。「あぶない!」と彼はその突嗟、自分の心を緊張めた。「考えてはいけない考えてはいけない。無念無想、一念透徹、やっつけるより仕方がない」
で彼は自分の構えを、一層益※(二の字点、1-2-22)かたくした。場内寂然と声もない。
窓からさし込む陽の光さえ、思いなしか暗く見えた。
こうして時が過ぎて行った。
造酒にとってはその「時」が、非常に長く思われた。