Classici giapponesi con furigana
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きつえんへき
喫煙癖
佐左木 俊郎
Leggi 喫煙癖 (きつえんへき) di 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1988 caratteri · 5 schermate
」
「それはそれは……実を申しますと、あの頃その売店に座っていたのは、私でござんすよ。」
「ははあ! それさね。」
爺さんは驚きの眼をみはって、婆さんの顔を、じっと視直した。
「それさね。」
「これを覚えておいででしょうがね?」
婆さんは爺さんの前に片手を出して見せた。その指には真鍮の指輪が鈍く光っていた。
「思い出しました。貴女でしたか? その指輪は、私が、機関車のパイプを切ってこしらえた指輪でしたがなあ。」
「銅貨の中へ混ぜて、貴方がこれを私にくれて、顔を赤くしながら逃げるようにして走って行ったのを、今でも覚えていますよ。私はそれから、この指輪を片時もこの指から脱いたことがございませんよ。こんなに磨り滅ってしまいました。」
「貴女でしたか? それで貴女は、今、どこで何をしておいでになりますね。」
「月寒で、ほんのつまらない店をもって、お茶屋をやっています。すぐですからどうぞお寄りになって、ゆっくり、お茶でもあがって行って下さいましよ。それはそれは、あの時の方は、貴方でございましたか?」
馬車はもう月寒の町並に這入っていた。
――昭和六年(一九三一年)九月『北海タイムス』