Classici giapponesi con furigana
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ちじょう
地上
島田 清次郎
Leggi 地上 (ちじょう) di 島田 清次郎 (しまだせいじろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 175.250 caratteri · 350 schermate
彼は急に機嫌がよくなった。
「試験はもうすみましたかね」
「今日すんだところです」深井が答えた。
「道理で長い間やって来ないと思っていたっけ――来年の正月号の『底潮』が昨日刷れて来ましたよ」後ろへ反りかえって書棚の下段に積み上げられた薄い雑誌を一つ掴みとって深井と平一郎の前に差し出し、にこ/\無意識的に人の好さそうに笑っていた。その笑いは決して強者のあの深い厚味があって不透明な笑いでなくて、弱者が、恐れていたことを恐れなくともよかったとき感じる安易さが生み出す笑いであった。平一郎は何となくくみし易いというような心安さを感じた。平一郎は雑誌の一枚一枚をめくってみた。深井の名が四号活字で組まれてあった時なぜか胸が躍った。
「よく刷れましたね」
「そんなもんですかな」尾沢は自嘲するように答えた。その答のうちには(どうでもなるようになるがいい!)というような寂しい投げやりな感傷が潜んでいた。
尾沢はやがて新しい雑誌をとりあげて無造作に頁を翻していたが、「今度は己、洗いざらしに自伝を書いたっけ。哀れな老いぼれた青年の手紙っていうのね、それだよ。読もうか? ――聞いていたまえ、読むから」