Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうふ

坑夫

夏目 漱石

Leggi 坑夫 (こうふ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 141.690 caratteri · 283 schermate

Aozora Bunko

蟇口は立派だが中を開けられたら銅貨が出るばかりだ。開けて見て、何だこれっぱかりしか持っていないのかと長蔵さんが驚くに違ない。どうも気の毒である。いくら足し前をするんだろうなどと入らざる事を苦に病んでいると、やがて長蔵さんは平生の顔つきで帰って来た。

「さあ、これが御前さんの分だ」

と云いながら赤い切符を一枚くれたぎりいくら不足だとも何とも云わない。きまりが悪かったから、自分もただ

「ありがとう」

と受取ったぎり賃銭の事は口へ出さなかった。蟇口の事もそれなりにして置いた。長蔵さんの方でも蟇口の事はそれっきり云わなかった。したがって蟇口はついに長蔵さんにやった事になる。

それから、とうとう二人して汽車へ乗った。汽車の中では別にこれと云う出来事もなかった。ただ自分の隣りに腫物だらけの、腐爛目の、痘痕のある男が乗ったので、急に心持が悪くなって向う側へ席を移した。どうも当時の状態を今からよく考えて見るとよっぽどおかしい。生家を逃亡ちて、坑夫にまで、なり下る決心なんだから、大抵の事に辟易しそうもないもんだがやっぱり醜ないものの傍へは寄りつきたくなかった。あの按排では自殺の一日前でも、腐爛目の隣を逃げ出したに違ない。