Classici giapponesi con furigana
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しおばな
塩花
豊島 与志雄
Leggi 塩花 (しおばな) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.421 caratteri · 25 schermate
が山口の方は、殆んど習慣的な微笑を浮かべた。そして吉村氏がそれきり黙ってるので、彼は言った。
「私は顔を知ってるだけですが……何という名前ですか。」
「え、名前って……。」
「さきほどの、あの人の名前ですよ。」
「あ、そう……。」
そして山口は、彼女が魚住千枝子という名前であることを知った。
これは、山口にとっていい収穫であったが、その後のことはうまくゆかなかった。山口はもともと、外交官を志望して、外務省に勤めていたが、終戦後すぐ、官省に見きりをつけて、新らしい政党の書記局にはいった。政治家も一種の対内的外交官だとの見解を持っていた彼としては、目的変更ではなくて、外務省の機能喪失を先見したわけである。そして彼が時折、一年に二回ばかり、吉村氏を訪問するのも、なにかやさしい飜訳の仕事、片手間で出来るような仕事を、探りに来るためであった。外交官或は政治家たる者は、一二冊の著書は持っている方がよく、少くともそれは下らない勲章ほどの価値はあるだろうと、考えていたのである。然し何か独自の著述をやるだけの自信はさすがになく、まあ飜訳ぐらいならと思ったのである。ただそれぐらいのところだったので、随って、吉村氏への用件は、頼む方も聞く方も、いい加減な数語で済んだ。