Classici giapponesi con furigana
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ちり
塵
夢野 久作
Leggi 塵 (ちり) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2093 caratteri · 5 schermate
ガラ空の旅人宿の真昼間からペコペコ三味線の音が洩れ出して来る。その門口に並んだ鳳仙花が風もないのに乱れ落ちて、はかない紅白の花びらがあとからあとから土の中に消え込んでゆく。その行く人もない、長い、白い往来の途中から、思い出したように塵ホコリが立つ。続いて又一、二カ所……やがて往来一面の真白い塵ホコリが立ち上って、昔ながらの通りの屋根や柱を、一層、昔めいたものにしてしまう。
「新古御時計」と書いた看板の蔭に、怪しげな色の金銀細工、マガイ金剛石、猫目石、ルビー、サファイヤの類が、塵に蔽われたまま並んで光っている。その奥の暗がりの中で、幾個かのチックタックの音が、やはりホコリだらけの呼吸を断続させている。その片隅の壁の付け根に坐った蒼白い、痩せ細った禿頭が、軒先からためらい流れて来る長い長い昼さがりの片明りの中に、黒い拡大鏡を片眼に当てがいながら、チロチロとよろめく懐中時計のハラワタをいつまでもいつまでも透かし覗いているのが、やがてコッソリ瞳をあげて、明るい往来を望み見る。
トタンに明るい往来一面にホコリが立つ。そのあとから乾燥し切った風が、黄色と黒のダンダラになって追いかけて行く。