Classici giapponesi con furigana
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ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
Leggi 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 46.485 caratteri · 93 schermate
同じ写真にちがいない。……が、どこか微妙に、ちがっていた。長い間肌につけていたので、竜太郎の持っていた写真は、すっかり角が丸くなっていたのに、この写真はそこへ指を当てると、ちくりと針のように刺した。写真の下の献辞の文字もよく似ているが、どことなく丸味があって、たしかに別な人の筆蹟だった。写真を横にして、薄光にてらしてみると、そのインクは、いま書いたばかりのように生々しかった。
そればかりではない。写真を目に近づけた途端、何ともいえぬふくよかな匂いが、竜太郎の嗅覚にまつわりついた。
あの匂いだ!
あの少女が、身にしめていた、高貴な、そのくせ絡みつくようなところのある、言い表わしようもない、ほのぼのとした、あの香水の匂いだった。
竜太郎は、卒然たる感情に襲われて思わず眼を閉じた。
さまざまなことを、何もかにも、いっぺんに了解した。王女は、やはり、あの夜の少女だった。
(あの古びた写真のかわりに、新しい写真を、わざわざヤロスラフ少年に持たして寄越したのだ)
たとえようのない愉悦の感情が、あたたかく心をひたし始めた。じぶんが願っていたのは、こういう、ちょっとした厚意……それだけでよかったのだ。