Classici giapponesi con furigana
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ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
Leggi 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 46.485 caratteri · 93 schermate
そして、また、海のほうへ向くと、それなり動かなくなってしまった。竜太郎は、腹が立ってきた。それで、また、ひと足進み寄ると、すこし厳しい声で、いった。
「明日からは、ご自由にお使いくださって差支えないのです。でも、今晩は……」
少女は、こちらに背中を向けたまま、
「今晩はいけなくて、どうして、明日になれば使ってよろしいの」
「明日、私はいなくなります」
「お発ちになりますの」
竜太郎は、低い声で、いう。
「明日、私は死ぬのです。ここの海で」
また沈黙がつづいて、それから少女がこういう。
「じぶんで死ぬのは、なかなか勇気がいりますわ。……あたくしも、それは知っています」
二
アンチーブの灯台の蒼白い光芒が、海の上を手さぐりはじめる。瞬間、突堤の腹を白く浮きあげ、よろめくように水平線の向うへ這いずってゆく。
(うるさい。……何を、どう知ってるというんだ。なんでも、いいから、早くどこかへ行ってしまえ)
竜太郎は、不機嫌な声で、
「死ぬよりも、生きて行くほうが、もっと勇気の要る場合だってありそうですね」
「それも、ぞんじていますわ」
聞きとりにくいような低い声でそう言うと、少女は、竜太郎のほうへ白い顔をふり向けた。