Classici giapponesi con furigana
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なつめせんせいのついおく
夏目先生の追憶
和辻 哲郎
Leggi 夏目先生の追憶 (なつめせんせいのついおく) di 和辻 哲郎 (わつじてつろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.272 caratteri · 21 schermate
一一
砕かれた心のみが愛を生かせ得るのである。『明暗』に至ってそれは正面から取り扱われた。「私」を去れ。裸になれ。そこに愛が生きる。そのほかに愛の窒息を救う道はない。
一一
先生の厭世的な気分は恋愛を取り扱う態度に十分現われている。しかしそれがさらに明らかに現われているのは生死の問題についてである。ここに先生自身の超脱への道があったように思う。
元来先生は軽々しく解決や徹底や統一を説く者に対して反感を持っていた。人生の事はそう容易に片づくものでない。頭では片づくだろうが、事実は片づかない。――しかしこれは片づける事自身に対する反感ではなくて、人生の矛盾や撞着をあまりに手軽に考える事に対する反感である。先生は望ましくない種々の事実のどうにもできない根強さを見た。そうしてそのために苦しみもがいた後、厭世的な「あきらめ」に達した。顧みて口先ばかり景気のいい徹底家の言葉に注意を向けると、思わずその内容の空虚を感じないではいられないのである。
けれども「あきらめ」に達したゆえをもって先生は人生の矛盾不調和から眼をそむけたわけではなかった。先生はますます執拗にその矛盾不調和を凝視しなければならなかった。