Classici giapponesi con furigana
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ゆうがおのもん
夕顔の門
吉川 英治
Leggi 夕顔の門 (ゆうがおのもん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.956 caratteri · 29 schermate
もう霜になったの毛を顫わせて、惣七は、
『ようも家名を汚し、良人の顔に泥をぬりおったの。――うぬ、出てうせねば!』
槍を繰り引いて、垂れ籠めている駕の内へ、ずばっと突き入れようとした時、並木の陰から、閃っと迅い人影が、彼の側へ跳んで槍の手元をつかんだ。
『御老台。あなた迄が、何をなさる』
『あっ――お身は兵庫どの』
『あなたに、こんな事をさせる程なら、拙者も永い忍苦はしませぬ。こうした事の生れる初めに、あなたも父として何も落度はなかったか、拙者も良人として足らぬ所はなかったか。それも考えてみなければなりますまい』
『ない、わしに落度はない。町人なら知らぬ事、武士の娘に――又武士の間に、そんな斟酌はないことじゃ』
『武士。――仰せられたその武士へ、では何で、お市を嫁がせる前にあなたは、頼む! と拙者に手をついたか』
『……む?』
『武士には、一諾を重んじるという事がござりますぞ。事情を打明けて、この娘、頼むと仰せられたあの涙を、なぜ今お持ちなさらぬのか。よろしいお娶い申そうと、その時云った然諾を、拙者はまだ、胸から捨ててはおりませぬ』
『…………』
『いや一諾の、信義のと、肩肱張った理窟ばかりではない。