Classici giapponesi con furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Leggi 夜の靴 (よるのくつ) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.056 caratteri · 213 schermate
隣組のどの家からも餅を貰う。夕刻六畳の私の部屋は並んだ餅で半分点点と白くなった。家家に随って餅には個性がある。見ていると篆刻のようで、家の盛衰も餅の円形に顕れている。これはどこ、それはあそこ、と私は想像で当てるとほとんど的中したが、現在というものが餅に姿を顕しているのも、手で作った円形という最も簡単で、難しい威厳あるものを無意識で作ったからであろうと思う。祈りは餅に出るものだ。
昼食を私一人が久左衛門の家で御馳走になる。せつの新婿も一緒だが、この婿は終始少しも喋らず無愛相な顔で、ぺろぺろと食い、最後に一言だけ、突然、
「嫁をもらうまでは、おれは女を、買った買った。」と妙なことを云った。
そして、「おい、おせつ、火つけてくれ。」と云ったかと思うと、部屋の一隅に二間ほど離れているせつの所へ、一本煙草を投げつけた。別に怪しむものもない。愛情を示した見栄のこの荒荒しい挙動がも早や普通のこととなっている二人の生活だ。それも種馬つけという天然の破壊を行う作業が、また二人の間でも物柔かな紐帯で行われている日日を、ふと私も普通の生活のように思い込み一緒に箸を動かしているのである。