Classici giapponesi con furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Leggi 夜の靴 (よるのくつ) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.056 caratteri · 213 schermate
そして、これがそもそも一番の幻影ではないのか。自分というものが幻影で満ちているときに。まことに、我あるに非らざれど、という馬祖はもうこれから脱け出ている。しかし、私はこの幻影を信じる。二者選一の場合に於ても、つねに私は自分の排する方に心をひかれる小説家だった。たしかに私は賢者ではない。万法明らかに私の中にも棲みたまう筈だのに、私は愚者にちかい。
断り通しの赭土の傍に立って私は火燧崎の方を振り返ってみた。僧兵の殺戮し合った場所は、あのあたりから、このあたりにかけてであろうが、念念刻刻死に迫る泥中の思いにも薄雪はこうして降っていたことだろう――
十一月――日
荷は十一包みも出来あがった。参右衛門が縛りあげてくれたものだが、日ごろの習練が効きすぎどれも米俵のようになる。
「じゃ、あたしたちも、いよいよ帰るのね。」
妻は荷を見ながら名残り惜しげだ。喜んでいるのは子供らだけである。私もさみしい気持ちでがらんと空いて来た部屋の中を見廻した。鯉もふかく水中に沈んでいる。
「毎年いくら飼っても盗まれるんだが、今年はお前さんたちがここにいるので、鯉も盗まれずにすんだのう。