Classici giapponesi con furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Leggi 夜明け前 (よあけまえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 105.172 caratteri · 206 schermate
稲葉のおそのさん(おまんが里方の夫人)へはわたしから返事を出して置いたよ。あのおそのさんもお前、いろいろ心配していてくれると見えてね、馬籠から上伊那の南殿村まで女の足では三日路というくらいのところだから、わざわざ諸道具なぞ持ち運ぶには及ばん、お粂の箪笥、長持、針箱の類はこちらで取りそろえて置くと言ってよこしたさ。手洗い桶、足洗い桶なぞもね。ごらんな、なんとかこちらからも言ってやらなけりゃ悪いから、御承知のとおりな遠路なことじゃあるし、お民も不調法者で、したくも行き届かないが、まあ万事よろしく頼む――そうわたしは返事を書いてやったよ。」
「どうでしょう、お母さん、今度の山林事件が稲葉へは響きますまいか。うちじゃ、もう庄屋でも、戸長でもありませんよ。」とお民が言って見る。
「そんな稲葉の家じゃあらすかい。いったん結納の品まで取りかわして、改めて親類の盃でもかわそうと約束したものが、家の事情でそれを反古にするような水臭い人たちなら、最初からわたしはお粂の世話なんぞしないよ。あのおそのさんはじめ、それは義理堅い、正しい人だからね。」
おまんはその調子だ。
ここですこしこの半蔵が継母のことを語って置くのも、山国の婦人というものを知る上にむだなわざではないだろう。