Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Leggi 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 254.021 caratteri · 495 schermate

Aozora Bunko

極めて温良質朴な男です。

「今晩は……」

「よくまあ……」

「恐れ入ります……」

充分に身構えをして見直したのですが、やっぱり、山里に見る普通の百姓体の若い者以外の何者でもないし、その肩越しにのぞいて見ても、しきり戸棚の彼方に、人骨がころがっているようなことはない。炉にはよく火が燃えている。これが銀のような毛を乱した婆様でもあると、凄味も百パーセントになるが、こんな普通平凡な田舎男では、化けっぷりに趣向がなさ過ぎる――

と思いながら、七兵衛はこの一つ家の中へ入りますと、男が非常に親切に炉辺に招じながらも、口に繰返して、

「よくまあ、鬼に喰われませんで……」

百五十一

おかげさまで鬼に喰われもせずここまで来たことはごらんの通りだが、そうそう繰返して言われると、ここへ来るまでには、鬼に喰われるのが当然で、喰われないで無事で来たことが意外であったというようにとれる。

もしまたこの質朴な田舎男が、仮りに鬼の化け物であるとしてみると、まさにこれから人を捕って喰おうとしながら、表向き、こんな空々しい言葉を吐くのが、もう既に人を喰っている。

七兵衛は面憎くその男を見直そうとしたが、どうも、憎めない。