Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Leggi 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 368.567 caratteri · 720 schermate
それを朱塗の丸行燈が及ぶ限り映して、映し足りないという色を見せているものですから、さながら古城内の評定の間を思わせるような、広さと、わびしさを漂わせている中で、経机の上に置かれた短冊と、筆とが証明するように、この夫人は、歌を思うているものらしい。
五条川の水の音も静かだし、古城址に啼く梟の音も遠音に聞えて来るし、木立の多い広い屋敷の中の奥まったこの建物の中の夜は、いかさま歌を思うのにふさわしいものらしい。
右の桔梗と、蛇の目の紋散らしの襖の外で、その時軽く咳が起る。
絵のような時代のついたこの御殿の一間に、ただひとり、歌を思うているとばかり思うていると、今の軽い咳。軽いというよりは、病人を暗示するような咳によって見ると、次の座敷に人がいる。
二三度、軽く咳入って、それから静かな寝返り。どうしても病める者の気配としか思えない。
それだけで、また、ひっそりと元に返ったけれども、歌を思うには、少しさわりになったと見えて、
「伊津丸、寒くはない?」
「いいえ――」
かすかながら返事がある。それは果して病人である上に、幼い人であるらしい。
その時、夫人は、脇息のように肱を置いていた経机へ、正面に向き直りましたから、今まで蔭になっていた床の間の画像が、ありありと見え出してきました。