Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Leggi 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 368.567 caratteri · 720 schermate
しかし、その場の光景はその瞬間だけで、下なる人は直ちに面を伏せて、軽く足許に落ちた数珠を掻き寄せると同時に、右手は手桶にかけて、難なく水と姿のすべてとを家の中に運んでしまいました。
幻怪にもせよ、恐怖にもせよ、幻怪でも恐怖でもなく、ただ人あって水を汲みに出たという平凡極まる光景であったにせよ、眼前のその事は、それでひとまず解決しましたが、それと同時に、背後の圧迫のゆるやかなことを感ぜずにはおられません。
四十七
その夜の寝物語に――といっても、襖一重の明け開いた隔ての間で、竜之助とお雪とが、こんな話をしました。話はむしろ、お雪の方から持ちかけたものです。
「ねえ、先生、いつまでもこうして、白骨にばかりもおられませんわね」
「でも、こんなところで、一生暮してもいいと、お前は言ったではないかね」
「一時はそう思いましたけれども、ここは、わたしたちだけの天地ではありませんもの」
「我々だけの天地というものが、別に造られてあるはずはないのだ」
「それはそうですけれども、温泉だけに、人の出入りが絶えませんわね、誰も来ないはずの冬の白骨へ、やっぱり、思いがけなく、いろいろの人が出たり入ったりするものだから、わたしは危なっかしくて、このごろはほんとうに落着かなくなりました」