Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Leggi 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 242.044 caratteri · 477 schermate
二十一
その時分、神尾主膳は、もう栃木の大中寺にはおりません。
ほどなく、根岸の御行の松に近いところへ、かなりの広い屋敷を借受けて、そこへ移り住んだ主というのが、別人ならぬ神尾主膳でありました。
この屋敷は、とても以前の染井の化物屋敷ほどの面積はないが、それでも相当の間数と庭とがあって、中にじっと潜んでいる分には、あまり近所の人目に、わからないほどの広さと静けさとを持っています。
ここへ移り住んだけれども、その当座、神尾は決して外出をするということがなく、日中は庭先へさえも出ない有様で、至極おとなしく暮らしていたが、どうかしたハズミで、部屋に備付けの鏡を見た時に、神尾が何ともいえない不快な面色になって、ひとりでじれ出してくるのが例になっています。
寺へ、逼塞して、ひとたび心の洗濯もしてみたけれど、額に残る淫眼の傷は拭えども去らず、消せども消えず、それを見るたびに神尾が、怒りつ、焦れつするのもまた無残なるものであります。
ところで、この神尾が、移り住んで来たその身のまわりの世話をしている女が、寺男の女房のお吉であることも、この世界にはものめずらしいばかりであります。