Classici giapponesi con furigana
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しっさくき
失策記
豊島 与志雄
Leggi 失策記 (しっさくき) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4228 caratteri · 9 schermate
ところで、何かのついでに、鼻の話が出ると、彼女はひどく敏感で、即座に片袖で自分の鼻を押え、片手を振って、鼻の話は止めましょうと云うのだ。そのくせ、彼女の鼻はいくらか団子鼻ではあるが、さほど醜いものではない。それを自分ではひどく醜悪だと自信しているらしい、或は鼻で何かよほど不幸な目にあったらしい。――彼女に云わすれば、意志や修養など自分の力ではどうにもならない肉体的欠陥は、当人の前で口にすべきではないのである。
その婦人が、私にしばしば結婚をすすめた。初めは、私が妻の死後ずっと独身生活を続けているのを見て、勝手な理窟をつけては感心していたのであるが、いつのまにか変節改論して、しきりに結婚をすすめるようになった。それも、結婚なさいというのではなく、私がもう相当な年配のせいか光栄にも、奥さんをお貰いなさいというのであり、遂には、このお嬢さんをお貰いなさいというようになった。
そのお嬢さんというのが、彼女の遠縁に当る名門の令嬢で、女子大学出身の才媛、勉学のために年は二十七になってるが初婚、持参金十万円近くあるという。ほほうといった気持で私は、彼女が差出す晴れやかな写真を、婦人雑誌の口絵でも眺めるように見やったのである。