Classici giapponesi con furigana
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しっちょうき
失蝶記
山本 周五郎
Leggi 失蝶記 (しっちょうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.072 caratteri · 44 schermate
提灯の火は隈川別墅のあたりにあらわれ、打合せたとおり三度、ゆっくりと大きく円を描きました。私は深い呼吸をし、右手を眼の前へあげて、指をひらいたり拳を握ってみたり、それから空を見あげました。――提灯の合図を見てから、初めて気持がおちついたようで、全身にこころよい力の充実を感じました。
「おい、せくなよ」と私は呟きました、「一の太刀が大事だぞ」
下緒を取って襷に掛け、汗止めをし、袴の股立をしぼりました。これらはできるだけ入念に、時間をかけてやり、それから灌木の茂みのうしろへ隠れました。――別墅との距離は五六町くらいでしょう、まもなく、道の向うに提灯が見え、小さく揺れながらこっちへ近づいて来ます。
「供がいっしょかな」
提灯は供が持っているのではないか、と思ったのですが、姿が見えるようになると、一人だということがわかりました。私は草履をぬいで足袋はだしになり、刀を抜いて二度、三度素振りをくれ、呼吸をととのえて待ちました。――真壁は足ばやに近づいて来、土橋を渡って、すぐ前を通り過ぎました。
二間ほどやりすごしておいて、私は道へ出、うしろからすばやくまを詰めながら叫びました。