Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Leggi 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.954 caratteri · 24 schermate
三
はるかな温かさ――仏様の体温――を感ずると、綾麿の眼は夢みる人のように閉じられます。全身の脈管に密を流すような法悦を感じて、このまま御仏の国に生れ変りそうに思えたのでしょう。
その状態が幾瞬間続いたかわかりません。或はもっともっと長かったかも知れないのですが、兎も角十年目に感じた観音様の体温に恍惚としていると、何処からともなくコトリと音が聞えるのです。ハッと眼を開いて見ると、丁度綾麿の遅いのを心配して、上から迎えに降りて来たらしい仲良しの香折が、廊下の端の方、他の一体の観音様の蔭に隠れて、好奇と羞恥と、そして憎悪と恐怖をさえ交えた眼で、凝っと此方を見ているではありませんか。
三
処女心の不思議な動きを、私はここで申上げようとしているのではありません。が、兎も角、明治四年の十六娘の微妙な感情を、ほんの少しばかりお伝えしなければ、此話の筋が通らなくなります。
南郷綾麿が頬摺りしていた相手がもし本当の生きた人間の女性であったなら、それは高貴の姫君たると、岡場所の頽廃し切った女であろうと、香折はたった一と眼で胸を悪くして逃げ出したことでしょう。そしてどんなに強い誘惑があったにしても、生涯南郷綾麿の側には寄り付こうとしなかったに違いありません。