Classici giapponesi con furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Leggi 契りきぬ (ちぎりきぬ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 32.757 caratteri · 66 schermate
ただそうするほかに手段がないという、漠然とした直覚に応じただけである。
――いけない、そんなことはいけない。お帰り、そのまま帰るんだよおなつ。
ときおり風がくると、垂れた柳の枝が揺れて、ばらばらとしずくが降りかかった。そのしずくの音のなかから、そう呼びかけるこえが聞えるようである。
――そんな恰好で、どうしようというの、お帰り、おなつ、帰るんだよ。
おなつは身ぶるいをした。ともすると心が挫け、そのままつい駈け戻りそうになる。寒いのだろうか、とりはだがたち、歯がかちかち触れ合うほど体が顫えた。――そのとき彼が来たのである。悠りした歩きぶりで、印いりの傘をさして、……彼だということはすぐにわかった。おなつは息をつめ、自分の前を通ってゆく彼の姿をじっと見まもった。
――いけない、おやめなさい。
こういう声を聞いたように思い、その声につきとばされたかの如く、おなつは樹蔭から出ると走りだした。はだしの足がなにかを踏み、鋭どい痛みでああと叫んだ。しかしそのまま走ってゆき、彼の傘の中へとびこむようにして、いきなり縋りついた。
「どうぞお助け下さい、追われております」