Classici giapponesi con furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Leggi 契りきぬ (ちぎりきぬ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 32.757 caratteri · 66 schermate
昏れがたになると衣巻がそう云った。おなつはひきとめたかった。明日になればこの家を出なければならない、この家を出れば『みよし』にもいられなくなる。この人たちに見知られてしまったのだから、どこかよその土地へ住み替えをしなければならない。今日が最後なのだ、もっともっと接待をしたいし、みんなのなごやかな話を悠り聞いていたかった。――どうぞもう暫く。そう口まで出たけれども、この家における彼女の立場としては、そんなに諄くひきとめるわけにもゆかず、心のなかでそっと、一人一人に別れを告げながら送りだした。
「たぶん帰りはおそくなるだろう、待っているには及ばないから、さきに寝ているがいい」
出てゆくとき精之助はこう云った。
伊代と食事をして、あと片づけが済むとおなつは自分の部屋へはいって、持ち物の始末をした。ひと月のあいだに、貰ったり借りたりして、ひととおり不自由をしないくらいの物が揃っていた。――しかしおなつはすべてを置いてゆくつもりだった、これは遣るとはっきり云われた物も、持ってゆく気持にはなれなかった。なにもかも置いて、初めてこの家へ来たときの姿で、誰にも知れないように出てゆこうと思った。