Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おくのうみ

奥の海

久生 十蘭

Leggi 奥の海 (おくのうみ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.005 caratteri · 26 schermate

Aozora Bunko

沖見役の番士が二人、常住に詰めているほか、小間木の代官所から月の五ノ日に物書が通ってくるが、天保七年の米留から江戸への廻漕がとまり、七戸丸という、五百石積の藩船が、沼尻から動かないので、さしあたっての用はない。

九月の中旬、七戸丸の船頭が、

「棚(舷)を締めさせてもらいたい」

と言いにきた。

沼尻のような水の動かないところに、長く船をつないでおくと、構造がゆるんでくるので、ときどき沖へ出して、荒波に打たせなくてはならない。舟子どもも、陸へ上げたきりでは、手なぐさみばかりして、怠け者になってしまうから、沖でみっしりと締めあげなくてはならない、という。

金十郎の裁量にあまることだったが、反対する理由もない。言う通りに出船簿に判を押してやった。

七戸丸は五日ばかり海に出ていて、沼尻へ入ってきたが、なにを積みとったのか、言うに言えぬ悪臭がそのほうから吹きつけてくる。

船頭を呼んでたずねると、船頭は気まずい顔で、ぷいとそっぽを向いたが、あとでくじらの大きな切身を番所へ届けてよこした。十月の中ごろまでに、そんなことが三度ばかりあった。

十一月二十日の朝、川村孫助がだしぬけに船番所へやってきた。