Classici giapponesi con furigana
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じょよう
女妖
江戸川 乱歩
Leggi 女妖 (じょよう) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9691 caratteri · 20 schermate
鼠色の背広がまだ新らしかった。赤い縞のネクタイが、頬の上にはね返って、肥った顔が土色だった。チョッキがベットリ濡れていた。その下のワイシャツが、頸の辺までまっ赤に染まっていた。胸を刺されているのだろう。五十前後のデブデブ肥った男だった。土色の頭は、地肌が露出して、絹糸のもつれたような毛が、僅かに残っているにすぎなかった。
彼が接近したことが、刺戟になったのかも知れない。その時、おそろしいことが起った。倒れている男の瞼が動き出した。そしてパッと、目が飛び出すほど見ひらかれた。ガクンと寝返りをうった。そして両手で床を引っ掻き、烈しくもがきはじめた。そのもがき方は、こちらが全身汗びっしょりになるほど、恐ろしいものだった。
肥ったからだから、ゴム人形をおしつぶしたような、妙な叫び声が漏れた。何か云っている。飛び出した眼が、浩一の顔に釘づけになっている。哀願の目だ。
「殺してくれ。くるしい。早く、殺してくれ」
人間の言葉ではない言葉だった。
警察官ならば、このとき、「しっかりしろ、犯人はだれだ。おい、だれにやられたんだ」と、執念深く訊くだろう。だが、浩一はそんなことを確かめる気はなかった。