Classici giapponesi con furigana
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こうじんぶつ
好人物
佐々木 邦
Leggi 好人物 (こうじんぶつ) di 佐々木 邦 (ささきくに) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 52.609 caratteri · 107 schermate
「あゝ痛! 下駄も大切だろう? それじゃ行って来るよ」
「叔父さんは真正に粗々っかしいわね」
と八千代さんは千吉君の姿が門から消えた時、見たまゝの感想を洩らした。
「あんな風ですから私の心配が絶えませんのよ。夜晩い時には自動車にでも轢かれたのかと思いますわ」
と細君は何彼につけて自分の立場の容易ならぬことを主張する。しかしこれを段落に八千代さんは二階の書斎へ引き揚げた。この春郷里から出て来て一緒に暮す日は未だ浅いのだが、安子叔母さんに主婦の苦労を話し込まれたら止め度のないことは能く承知している。
斯ういっても、安子夫人は決してお冗舌でない。当人も然う言っているし、現に今八千代さんが二階へ上ってしまってから二時間というもの、完全に沈黙を守っていた。尤も縫いものをしながら針坊主を相手に物を言っているようなら医者に見て貰う必要がある。こんな次第でお独りの時は至って無口に渡らせられる。しかし矢張り女だから、口を動かしている方が動かしていないより心持が好いに相違ない。その証拠には黙っていると間もなく退屈を感じる。以前は然ういう折新聞や雑誌を読んで気を紛らしたものだが、昨今は八千代さんを利用する。