Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Leggi 季節のない街 (きせつのないまち) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 201.379 caratteri · 394 schermate

Aozora Bunko

島さんには妻がいた。島さんより十センチほど背が高く、躰重も十キロは多いだろう。脂肪のたっぷり付いた腰に怒り肩、手も足も大きく、胸などは乳牛ほどもあった。

――ほんとだよ、と相長屋の女房たちはかげで云った。あのかみさんが通るとうちが揺れて、棚の物が落っこちるんだから。

髪は茶色で薄く、眼がすわっていて、唇が厚く、左の頬に青い痣があった。――としが幾つであるかは見当がつかない、島さんは三十四だと云っているが、彼女は同じくらいにもみえるし、四十五、六にみえるときもあった。いつも黙っていて、近所の人たちともつきあわず、朝晩の挨拶さえもしないくらいだった。

島さんの妻は人に好かれないばかりでなく、むしろ嫌われていたようだ。

彼女は不機嫌な岩のように尊大で、人を見るときには「眼の右下の隅からみさげる」と云われた。また、それと同時に唇の左の隅が左のほうへへし曲るので、どんなに根性わるな者でも「あれほど小意地のわるい顔つきはできないだろう」という評もあった。

ここの住人たちのつきあいは、物の貸し借りと、ぐち話の交換が中心になっている。他人は泣き寄り、という言葉がかれらの唯一の頼りであり、信仰であるようにさえみえる。