Classici giapponesi con furigana
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まごしちとずんど
孫七とずんど
山本 周五郎
Leggi 孫七とずんど (まごしちとずんど) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.189 caratteri · 30 schermate
六
「やあやあ」と大音をあげて叫んでみた、「やあやあ……」
六
合戦はまさにたけなわだった、「やあやあ」ぐらいの叫びごえが聞える道理はない。だいたい戦場の雰囲気には絶えずひとすじの流れがあって、たるむ時はたるむなり、また緊まる時は緊まるなりに、全戦場をつらぬいて共通する一種の反射神経に支配される、たとえば敵と味方とが顔を合せた時、その一瞬に喰い合う眼、「応」という呼吸の合致があってはじめて戦いになる、敵を求める心と心とがぴたりと噛みあうところに勝負が始るわけだ。ところが孫七郎にはそれがない、全戦場をつらぬく闘志のながれがかれのなかには無いのだ。ちょうど油の中へ水を一滴たらしたように、どうにも周囲と密度が合わない、かれはまえの日「気合がわからない」と云ったが、つまりその気合に乗ることができないのだ、いってみれば紛れこんだ人間だったのである。
「やあやあ……」かれは困惑して、どうにもしようがなしに漠然と歩いていった、「弱ったなこれは、やあやあ、……やあやあ」
そのうちには相手があるだろう、誰かひとりくらいは突っかけてくるだろう、そう思いながら、なるべく箙の花枝の眼だつように、ずっかずっかと歩いていった。