Classici giapponesi con furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Leggi 家 (いえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 126.748 caratteri · 254 schermate
「お春や」とお種は下婢の名を呼んで尋ねてみた。「正太はどうしたろう」
「若旦那様かなし。あの山瀬へお出たぞなし」
こう十七ばかりに成るお春が答えたが、その娘らしい頬は何の意味もなく紅く成った。
「また御友達のところで話し込んでると見える」とお種は考え深い眼付をして、やがて娘のお仙の方を見て、「山瀬へ行くと、いつでも長いから、昼飯には帰るまい――兄さんのお膳は別にして置けや」
お仙は母の言うなりに従順に動いた。最早処女の盛りを思わせる年頃で、背は母よりも高い位であるが、子供の時分に一度煩ったことがあって、それから精神の発育が遅れた。自然と親の側を離れることの出来ないものに成っている。お種は絶えず娘の保護を怠らないという風で、物を言付けるにも、なるべく静かな、解り易い調子で言って、無邪気な頭脳の内部を混雑させまいとした。お種は又、娘の友達にもと思って、普通の下婢のようにはお春を取扱っていなかった。髪もお仙の結う度に結わせ、夜はお仙と同じ部屋に寝かしてやった。
主人や客をはじめ、奉公人の膳が各自の順でそこへ並べられた。心の好いお仙は自分より年少の下婢の機嫌をも損ねまいとする風である。