Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いえ

家

島崎 藤村

Leggi 家 (いえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 126.748 caratteri · 254 schermate

Aozora Bunko

人には言えない彼女の長い病気――実はそれも夫の放蕩の結果であった。彼女は身を食れる程の苦痛にも耐えた――夫を愛した――

ここまで思い続けると、お種は頭脳の内部が錯乱して来て、終には何にも考えることが出来なかった。

「ああ、こんなことを思うだけ、私は足りないんだ……私が側に居ないではどんなにか旦那も不自由を成さるだろう……」

とお種は、濡れた身を拭く時に、思い直した。

湯から上って、着物を着ようとすると、そこに大きな姿見がある。思わずお種はその前に立った。湯気で曇った玻璃の面を拭いてみると、狂死した父そのままの蒼ざめた姿が映っていた。

「真実に、橋本さんは御羨しい御身分ですねえ――御国の方からは御金を取寄せて、こうしていくらでも遊んでいらっしゃられるなんて」

すこし長く居る女の湯治客の中には、お種に向って、こんなことを言う人も有った。お種は返事の仕ようが無かった。

「ええ……私のようにノンキな者は有りませんよ」

お種は自分の部屋へ入っては声を呑んだ。

林の家族はやがて東京の方へ引揚げて行った。お種の話相手に成って慰めたり励ましたりした隠居も最早居なかった。