Classici giapponesi con furigana
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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
Leggi 寺田寅彦随筆集 第二巻 (えいがじだい) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 207.099 caratteri · 419 schermate
この火花の時間的ならびに空間的の分布が、あれよりもっと疎であってもあるいは密であってもいけないであろう。実に適当な歩調と配置で、しかも充分な変化をもって火花の音楽が進行する。この音楽のテンポはだんだんに早くなり、密度は増加し、同時に一つ一つの火花は短くなり、火の矢の先端は力弱くたれ曲がる。もはや爆裂するだけの勢力のない火弾が、空気の抵抗のためにその速度を失って、重力のために放物線を描いてたれ落ちるのである。荘重なラルゴで始まったのが、アンダンテ、アレグロを経て、プレスティシモになったと思うと、急激なデクレスセンドで、哀れにさびしいフィナーレに移って行く。私の母はこの最後のフェーズを「散り菊」と名づけていた。ほんとうに単弁の菊のしおれかかったような形である。「チリギクチリギク/\」こう言ってはやして聞かせた母の声を思い出すと、自分の故郷における幼時の追懐が鮮明によび返されるのである。あらゆる火花のエネルギーを吐き尽くした火球は、もろく力なくポトリと落ちる、そしてこの火花のソナタの一曲が終わるのである。あとに残されるものは淡くはかない夏の宵闇である。